暴露







「好きだったんよ、16……んん、17のときやったかな」
 酒を飲みながら、酔った様子もなく、こはくはそんなことを呟いた。
「その時はずっと四六時中ぬしはんのことばかり考えとった気ぃするわ」
 ふふ、と息を漏らすように笑って、燐音を見る。瞳はわずかに濡れているが、溢れることもなくそこにある。アルコールのせいだろう。それ以外には何もない。こはくの呑み方は陽気で、翳りみたいなものがない。ずっと愉しそうで、どちらかと言えばダウナーになるHiMERUなどとは対照的だ。
「びっくりしたァ、急に云うじゃん」
「云いたくなったんや。まぁ、昔のことやから」
 終わった話やし。
 そう言って、こはくはまたメニューを広げた。しめは何にする? と、小首をかしげて、燐音にも見えるようにメニューを向ける。とうに成人を過ぎても、幼さを装うくせが抜けないのだ。雑炊、と答えてから、燐音は、はじまりもしなかった恋の話を、手元の杯を干して強引に胃に落とす。






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